近年AI技術は驚異的な速さで進化しており、次から次へと新しいツールがリリースされています。中でもAIイラスト技術によって、文章や画像を使ってAIに指示を出すだけでオリジナルイラストを作成できるようになりました。
今回は、AIイラストの生成方法や、おすすめのAIイラストツールをご紹介します。
目次
AIイラストとは?
AIイラストとは、人工知能(AI)を使用して生成されたイラストを指します。プロンプト(指示)に基づき、人間のアーティストが行うような創造的な作業をコンピュータアルゴリズムが行うことで、オリジナルの絵画やイラストを生み出せます。
イラストの作成は従来、アーティストが手を使って描くか、コンピュータを使ってデジタルイラストを描くという方法が主流でした。しかし、生成AIの出現により、現在では誰でも簡単にオリジナルイラストを作成できます。
さらに、人間が思いつかないような新しい芸術作品を生成する可能性もあります。AIイラストは、アートの在り方に大きな変革をもたらす存在として、大きく注目を集めているのです。
AIイラストが注目を集めている理由
画像生成AIの注目度が高まったのは、英国のAI開発企業であるStability AIが画像生成AI「Stable Diffusion」を無料で一般向けに公開したことが始まりでした。「DALL・E 2」や「Midjourney」のような、それ以前の有料サービスと比べて利用のハードルが下がり、商用利用も可能になったため、世界中の企業や一般ユーザーが大きな関心を寄せるようになったのです。
この革新的なアプローチにより、多くの人々が画像生成AIを活用してクリエイティブな作品を作り出すことができるようになり、イラスト作成の可能性を広げ、ビジネスの領域においても革新的なツールとなりました。
そのほかにも、AIイラストが注目を集めている理由にはさまざまなものがありますが、主に以下の点が挙げられます。
誰でも簡単に、大量のイラストを作成できる
AIイラスト生成では、誰でも簡単に大量のイラストを作成できます。そのため、広告キャンペーンや商品のブランディングなど、ビジュアルコンテンツを多く必要とする企業にとっては、少ない予算で必要な枚数のイラストを作成することが可能です。
新しい表現の可能性を秘めている
AIは、人間では考えつかないような独特なスタイルやパターンのイラストを生成することが可能です。これにより、アートシーンの新たな可能性が開かれる未来が予測されています。
アーティストの在り方の根底を揺るがす
従来は、アーティストの手によって1からイラストが作成されていました。しかし、AIの登場により、大まかなデザイン構図はAIが提示したものの中から選択する、ということも可能になりました。
そのため、今後のアーティストの仕事は、その中から最適なものを選び出し、オリジナル作品に仕上げていくという役割にシフトチェンジしていくことが予測されます。
AIイラストができる仕組み
AIイラストの生成には、生成AIと呼ばれるクリエイティブな作業を行う人工知能が用いられています。生成AIは、従来の識別系AIのようにデータを判別するのではなく、入力したデータを元に画像やテキスト、音楽などを生み出せるAIです。
この機能は、ディープラーニングと呼ばれる人工知能の一分野から生まれたもので、大量のデータからパターンを学習することで実現されます。これによって、さまざまなスタイルや形状、色彩を持つイラストの生成を行うことが可能となります。
AIイラストの問題点・炎上の要因
便利でさまざまな可能性を秘めているAIイラストですが、利用の際にはいくつかの問題や課題もあります。とくに、著作権の問題については度々話題になります。たとえば、AIイラストはインプットされたデータを元に生成されるため、他の作品からの「丸パクリ」が指摘されることがあるのです。
ここでは、AIイラストが炎上してしまった事例をいくつかご紹介します。
mimicのサービス停止
AIイラスト生成サービス「mimic(ミミック)」が、リリース直後の2022年8月29日から炎上し、わずか1日でサービスが停止しました。mimicは、ラディウス・ファイブが提供するデザイナーやクリエーター向けのAIイラスト生成サービスで、最小15枚から最大100枚のキャラクターイラストを入力すると、AIがその特徴を学習し、クリエーター独自の新しいイラストを生成します。
しかし、著作権者の許諾なしに無断でイラストが利用される可能性や、不正な利用が行われる懸念がSNS上で指摘されました。これにより炎上が広がり、わずかな期間でサービスは停止される結果となりました。
※2023年8月時点では、サービスは再開しています。
キム・ジョンギ氏の作風イラスト作成ツールに関する議論
韓国の作家キム・ジョンギ氏が亡くなった後、ジョンギ氏の絵柄でイラストを生成するツールが発表されました。作品の著作権を侵害するものではありませんが、「絵柄の模倣を横行させて良いのか」と議論が巻き起こり炎上した事例です。法律上「絵柄」自体は著作権の対象外ですが、道徳的な問題に関しては議論が交わされ続けています。
AIイラストを自動生成する方法
AIでイラストを生成するには、写真を用いる方法と、文章で指示を出す方法の2通りがあります。ここではそれぞれの方法について、具体的な生成手順をご紹介します。
写真から自動生成
手元にある画像を、AIを使って別の画像に仕上げられます。AIは画像の特徴やスタイルを把握し、新しくイラスト化したり、エフェクトを追加したりすることが可能です。MeituやAIピカソなどのツールを使用すると、簡単に画像をアップロードし、写真をイラスト化できます。
文字から自動生成
イラスト作成のための指示を文章で作成し、イラストを作成することも可能です。Bing Image Creatorなどのツールを使用すれば、自分の作りたいイラストのイメージを、テキストで入力するだけでその通りのイラストを作成できます。
AI イラスト作成・画像生成ができるおすすめ無料ツール 10選
AIイラストを生成できる無料ツールは数多く存在し、デバイスや用途に応じて使いやすいものを選べます。ここではとくに人気のツールを10個ご紹介します。
Bing Image Creator
Bing Image Creatorは、Microsoftのウェブブラウザ「Microsoft Edge」のサイドバーに追加された画像生成AIツールのことを指します。このツールはOpenAIの「DALL・Eモデル」を採用しており、ユーザーが入力したテキストから、それまで存在しなかった新しい画像を生成することが可能です。
StableStudio
出典:StableStudio
StableStudioはStability AI社が以前に提供していた有償サービス「DreamStudio」をオープンソース化したものです。プロンプトを入力することで、自分の好きな画像を生成できます。画像生成だけでなく、編集も行うことができます。
LINE AIイラストくん
LINE上で利用できる画像生成AIサービスです。このサービスは、最新のAI技術である”Stable Diffusion”を利用しており、「AIイラストくん」を友達追加し、トーク画面で指示をテキスト入力することでイラストを生成できます。
Canva
出典:Canva
Canvaは、デザイン作成プラットフォームで、誰でもプロフェッショナルなグラフィックデザインを作成できます。その活用法は多岐にわたり、ポスター、フライヤー、ビジネスカード、ソーシャルメディアの投稿など、さまざまな規模と形式のデザインに対応しています。
新機能「Text to Image」で、ユーザーがテキストから高品質なAI画像を生成できるようになりました。この機能は、プロンプトを入力するだけで誰でも簡単にAIアートを作成できるツールです。
SNOW
出典:SNOW
SNOWは、顔写真のエフェクトの追加を可能にするカメラアプリです。AIアバター生成機能では、ユーザーが自身の顔写真を10〜20枚提供することで、その顔そっくりのアバターを自動的に生成します。自分そっくりで、理想的な自分を表現できるアバターを作ることができるのが人気の秘密です。SNSのプロフィール画像として利用できるなど、さまざまな場面で活用できます。
AIピカソ
出典:AIピカソ
AIピカソは、ユーザーが文章や簡単なラフ画を提供することで、高品質な画像を自動生成できるAI画像生成ツールです。具体的な要望を文章で記述したり、ラフなスケッチを描いたりするだけで、それに基づいた絵や写真を生成します。直感的で簡単な操作性が人気のツールです。
Meitu
出典:Meitu
Meitu(メイツ)は、多機能な画像の加工・編集アプリで、その中でもとくに注目されているのがAIによる写真のイラスト化機能です。アプリに写真を読み込ませるだけで、AIが自動で画像を解析し、イラスト化してくれます。
Picsart
出典:Picsart
PicsArtは、主にスマートフォンで使用される画像加工・編集アプリで、その使いやすさと高機能さから世界中で広く使われています。新たに追加されたAL画像ジェネレーターでは、プロンプトからオリジナル画像を作成できます。
PhotoDirector
PhotoDirectorは、サイバーリンクが開発・販売している高機能な写真編集ソフトウェアです。その使いやすさから、初心者からプロまで幅広く利用されています。最新のAI技術を活用した機能を多数備えていて、写真からオリジナルアバターを生成することも可能です。ほかにも、「AIオブジェクト除去」や「AIノイズ除去」など、AI技術による加工もできます。
YouCam Perfect
YouCam Perfectは、ナチュラルな美肌を演出できる写真加工・編集アプリです。シンプルな操作で肌の美白やシワの除去、小顔加工などの美肌エフェクトを施すことが可能で、誰でも簡単にプロレベルの写真編集を楽しめます。
ほかにも、コラージュ作成、人物の除去、青空の背景作成、体型の修正、背景の切り抜きや透過、複数の写真の合成など、多彩な加工・編集機能を提供しています。オリジナルのスタンプの作成や、文字の追加も簡単に行えるので、自分だけのオリジナル写真を作り出すことが可能です。広告やポスターの作成機能も提供しているため、ビジネス利用にも活用できます。
新機能「AIマジックアバター」は、最先端のAI Generated Content(AIGC)技術とStable Diffusionを活用して、アプリユーザーが自分自身に似せたAIアバターが作成できます。
AIイラストの活用事例
AIイラストを生成できるツールは数多くあることがおわかりいただけたかと思います。さまざまな可能性を秘めているAI技術ですが、ここでは実際のビジネスの場面でどのように使われていたいるのかをご紹介します。
広告業界
広告において、AIイラストを活用している事例があります。
たとえば、近年、3D技術とAIを融合させたAIイラスト作成ツールが登場しました。
この技術は、広告に最適な「架空人物」を作り出せるもので、その架空人物を広告商材に使用するなど、さまざまな用途で活用されています。架空の人物なので、撮影の必要もなく、多数の架空人物を準備して実際にモデルなどを撮影したかのようなリアルな広告を制作できます。
これにより、製作コストを節約することが可能です。それだけでなく、広告効果を分析することで、より高い効果をあげる人物像を作り出していくことも可能になります。
また、「コカ・コーラ」や「キンチョール」などのCMにもAIイラストが使用されています。
ゲーム開発
ゲーム開発においても、AIイラストの利用は拡大の一途を辿っています。従来のゲーム開発では、キャラクターデザイン、背景画像、プロップなどを一つひとつ手描きで作成するため、大量の時間とコストがかかっていました。しかし、AI技術の進化により、こうした制作作業の一部がAIに置き換えられつつあります。
たとえば、Yocat Gamesのゲーム「Traveler – The AI Story」の開発には、AIが活用されています。キャラや背景のイラスト、BGM、テキストとあらゆる要素がAIによって生成されており、独特の幻想的な世界観を生み出しています。
参考:「Traveler – The AI Story」公式サイト
漫画制作
AIと人間による制作方法は、新たな漫画作品を生み出すだけでなく、漫画制作の効率化や表現の多様性の拡大にも貢献します。AIが描くイラストは瞬時に生成されるため、締め切りに追われがちな状況を解消することが可能です。
また、AIが持つイラスト生成能力を活用すれば、人の手だけでは難しかった新しいスタイルや表現を探求することも可能となります。
たとえば、『サイバーパンク桃太郎』は、AIを用いて作成された漫画作品で、従来の漫画とは一線を画した表現が話題となりました。
参考:Amazon「サイバーパンク桃太郎 (バンチコミックス) 」
インテリアデザイン
AI技術は、従来の手描きや3Dモデリングによるデザイン手法を補完する形で、インテリアデザインの領域にも新たな可能性をもたらしています。アートディレクターのカレン・X・チェン氏は、Stable DiffusionのDepth Guided機能を利用してAIによるインテリアデザインを発表しました。
Webサイト制作
Webサイト制作においても、AIイラストの活用がされはじめています。サイトへの訪問ユーザーの行動や好みを分析し、その人の興味に合わせたデザインを自発的に作成することも可能となります。
まとめ:AIイラスト活用の新時代
AIイラストの技術は、数年間で急速に進化し、その応用範囲は多岐にわたります。AIイラストの魅力はその使い方次第で無限の可能性が広がることです。これはすべてのツールに言えることですが、とくにAI技術はその適用範囲が非常に広いため、いっそうその傾向が強いです。
広告業界からゲーム開発、漫画制作に至るまで、さまざまな分野でAIイラストの効果的な利用例が見られます。その一方で、AIイラストの適切な使用法を理解するリテラシーも必要です。とくに、インターネット上での炎上のリスクを避けるためには、ユーザーのリテラシー向上が求められます。
この記事では、AIイラストの活用例を見てきましたが、これらはAIイラストが持つ可能性の一部にすぎません。さらにテクノロジーが進化するにつれて、新たな応用例が出てくることでしょう。テクノロジーが進歩するにつれて、私たち自身もそれに適応し、進化していく必要があります。