世界標準の経営理論(著:入山 章栄 早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)の理解を深めるために、内容のまとめをアウトプットしていきます。

今日は世界標準の実証分析です。
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理論と実証は不可分である
理論が真に価値を持つには、理論(あるいはそこから導かれた命題・仮説)を現実・データと照らし合わせ、ビジネスの真理(truth)を描写しているかを検証する必要がある。
あるいは逆に現実を深く観察することで、新しい理論を浮かび上がらせる必要がある。
理論と現実世界の往復がなければ、理論はただの机上の空論に過ぎなくなる。この「理論と現実を突き合わせる作業」を総称して実証分析(empirical analysis)と呼ぶ。
演繹法と帰納法
本題に入る前に「演繹」と「帰納」の違いについて整理する。
演繹(deduction):先に理論から命題や仮説を導き出し、それが現実に当てはまるかを検証すること
帰納(induction):演繹の逆。現実を深く観察することで興味深い事実・因果関係を見出し、それを元に「これが(誰もが見つけていなかった)真理法則ではないか」と洞察すること
現代経営学の実証分析の6大手法
- 統計分析:アーカイバル・データを分析
第三者が既に集めたデータ(アーカイバル・データ)を入手し、それを使って統計分析を行うこと - 統計分析:質問票調査(アンケート調査)のデータを分析
真理の探究のためには、外からは見えない「従業員の心理状況」「職場の雰囲気」「経営者の性格」などを計測し、実証分析することも重要だ。
その時によく行われるのが質問票調査(アンケート調査)である。
質問票調査から得たデータを分析する統計手法は大きく2つ
1.回帰分析:質問票結果を集計して変数として用い、x→yのような因果関係を検証する
2.回帰分析を除く多変量解析の一連の手法:x→yだけでなく、x→y,z→y,y→wなど、複数の因果関係の集合体を検証できるのが特徴だ - 統計分析:心理実験のデータを分析
経営学では、人を使った心理実験をよく行われる。余分なノイズが少なく、特定の条件下における人の真理効果が精緻に判別できる - 統計分析:メタ・アナリシス
メタ・アナリシスとは、同じテーマで過去に行われた複数の実証研究の統計分析結果をまとめあげて再度統計分析し、「過去に行われた実証分析の総合結果」を導き出す手法である - シミュレーション
シミュレーションは現実のデータそのものを使うわけではないので必ずしも「実証研究」とは言い難い - 事例分析(ケーススタディ)
特定の企業・組織に入り込んで、インタビュー調査などを行っていく手法だ。事例分析は帰納法として使われることが多い。
実証分析の手法を選ぶ基準
どの実証分析手法を選ぶべきかは、第一義には研究目的による。とはいえ大まかな判断基準はあり、重要なのは以下の2点である。
- 理論ディシプリンとの相性
経営理論には導かれた命題・仮説を検証するのに向く実証分析手法と、向かない手法がある。
SCP・RBV・エージェンシー理論・取引費用理論など経済学ディシプリンの理論は、主にアーカイバル・データを用いた統計分析(=回帰分析)が用いられることが多い。
心理学ディシプリンはマクロ分野とミクロ分野で傾向が異なる。マクロ分野ではアーカイバル・データの統計分析、質問票調査の統計分析、心理実験、シミュレーションなどが幅広く使われる。一方、「リーターシップ」「モチベーション」「感情の理論」など、深く個人の内面に入り込むミクロ分野では、質問票調査の統計分析と心理実験が使われることが多い。
社会学ディシプリンの理論では、アーカイバル・データの統計分析、質問票調査の統計分析、事例分析などが使われる。
さらにそもそも統計分析に向かない理論もある。「知識創造理論」「ダイナミック・ケイパビリティ」「センスメイキング理論」などだ。組織内の複雑な意思決定が絡み合う動態プロセスを描く。暗黙知など、データ化が難しい要素もあり、その検証のためには組織内部に深く入り込んで観察する必要があるため、事例研究が用いられがちだ。 - 理論のライフサイクル
理論のライフサイクルは「黎明期」「中間期」「成熟期」の3つに分けられ、「どの実証手法が望ましいかは、理論ライフサイクルのステージによる」とされている。
黎明期:ビジネスを観察する必要があるため帰納法が向いている。
中間期(intermediate):さらに深い洞察のための事例研究(帰納法)と、他方でそれが広域な企業・組織・ビジネスパーソンに当てはまるかの検証(演繹法)の両方が求められる。結果、事例研究と統計分析の両者が用いられる。
成熟期(mature):徹底的な検証や、別の現象への適用(演繹法)が行われるため、実証分析手法の大勢が統計解析になっていく。