世界標準の経営理論(著:入山 章栄 早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)の理解を深めるために、内容のまとめをアウトプットしていきます。
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今日は社会学ベースの制度理論-前編の続きです。
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資源依存理論は現代に蘇る
過去に「RDTの命題は支持出来ない」との結論を得ていた本理論だが、以下2つのブレークスルーからいま経営学でRDTが復権してきている。
- 理論面のブレークスルー
- 現象面のブレークスルー
理論面のブレークスルー
まず過去の研究者が「産業界の高いM&Aを促す」という命題を支持出来なかったのは、過去のRDTが「依存関係が双方向で起こりうる」という事実を十分に組み込めていなかったと考えられる様になった。
そこで双方向の依存度の「合計」という意味のミューチュアル・インディペンデンス(MD)という概念が取り入れられた。
これは互いの依存度の合計が高いほど、互いが互いを必要とするので、友好的なM&Aなどの吸収戦術が行われやすい。
さらに両者の依存度の差を表すパワー・インバランス(PI)という概念の登場も画期的であった。
例えばA社のB社への依存度が高く、B社のA社への依存度が低かった場合、A社にはM&Aを通して外部抑制を吸収したいインセンティブが働いても、B社にはその必要性がなくなる。
結果、依存度が高い企業がM&Aを提案しても、依存度が低い相手企業はその提案を飲まないのでM&Aの発生確率は下がる。
このように従来の依存度の概念をMDとPIに分解して「MDが高い産業ではM&Aが多くなり、PIが高い産業間ではむしろM&Aが少なくなる」という命題が提示されて支持された。
現象面のブレークスルー
RDTのアントレプレナーシップ(起業)分野への応用が始まったことが現象面のブレークスルーとなった。
起業ほどRDTが重要な分野は他に無い。スタートアップ企業は規模が小さく、経営資源も乏しく、周囲のリソースに依存しなければ生き残ることができないからだ。
なかでもRDT文脈で対象になりやすいのがコーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)だ。海外経営学でCVCはshark(サメ)とも呼ばれる。
大企業CVCはVC専業企業と異なり、投資を受けたスタートアップが大企業の持つ販路・知名度などのリソースを活用できる点が魅力だ。しかし芽があると判断されると大企業がスタートアップの持つ技術を吸収してしまうリスクもある。
実際、大企業が投資先スタートアップ企業の技術を盗用する例は枚挙にいとまがない。これはMDがPIに変容することを意味する。
連携当初はスタートアップの技術を欲する大企業側と、大企業のリソースを活用したいスタートアップの思惑が合致しているので両者の依存度が高い。
しかし大企業がスタートアップの技術を吸収すると、大企業の依存度が弱まるので、スタートアップの依存度だけが高いままとなる。
結果、アンバランスな力関係となって大企業が圧力をかけ始めて、スタートアップが苦しむ羽目になる。
しかし、近年この状況を巧みな戦術で乗り越えるスタートアップが生まれてきている。
具体的には特許やNDA(秘密保持契約)などで自社技術を守ったり、自社技術が成熟・複雑化して真似できないレイター段階になったりしてからCVC投資を受ける戦術がそれに当たる。
加えて重要なことがVC専業企業の活用である。
VC投資業界は狭い世界で、投資企業がスタートアップ企業に理不尽な圧力をかければ、それが業界に知れ渡り、その様なことをする投資企業は業界で相手にされなくなる。
この様にRDTは「スタートアップのような小さな企業が、いかに大企業からの外部抑圧を巧みに避けるか」にも深い示唆を与えるのである。
筆者の考える日本経済躍進のカギ
日本経済躍進には大企業の下請けに甘んじていた中小企業の飛躍が欠かせない。
中小企業に高い技術を有するところは多いが、元請け・特定顧客への依存度が高すぎるが故に、自社のポテンシャルに気付けずにいる。まさに依存度がアンバランスでPIが高い状態だ。
しかし日本各地の中小企業で若い経営者がRDTと整合性の高い戦術で外部抑圧を巧みに解消して台頭し、飛躍を遂げている。
RDTを活用すれば時に小が大を活かし、翻弄し、外部抑圧を乗り越えることは可能なのだ。その際に求められることはRDTの基本「軽減・取り込み・吸収」3戦術だ。