経営

【経営理論】社会学ベースの制度理論-前編【理解と実践】

世界標準の経営理論(著:入山 章栄 早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)の理解を深めるために、内容のまとめをアウトプットしていきます。

世界標準の経営理論

今日は社会学ベースの制度理論-前編についてまとめます。

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社会学ベースの制度理論とは

まず制度理論には2種類「社会学ベース」「経済学ベース」がある。
経済学ベースはゲーム理論を基礎として「一人ひとりのプレーヤーが独立して、互いの意思を読み合いながら、まるで数式を解くかのように合理的意思決定する」という前提に立つ。

一方、社会学ベースの制度理論は「人は必ずしも合理的に意思決定するとは限らない」という前提に立っている。
そして現代の経営学の主流は後者の社会学ベースの制度理論である。

人は「合理性」よりも「正当性」で行動する

制度理論によると、社会に埋め込まれた人・組織・企業はその認知的・心理的制約から、経済合理性だけでは十分に説明がつかない行動を取り得る。

例えばダイバーシティ経営
著者の入山章栄氏が多くの大企業ダイバーシティ担当者に「なぜダイバーシティを進めたいのか」と聞くと、多くの担当者は「政府が進めているから」「他社が始めたから」「社会的な風潮だから」と答えたという。

ダイバーシティは知と知の新結合を生み出すのでイノベーションの源泉となり得るわけだが、多くの企業担当者はそれを理解せずなんとなく他社がやっているからという理由で行動している。

この企業が求める「社会的な正当性」をレジティマシー(legitimacy)と呼ぶ。制度理論によると、企業は時に利潤・経営資源獲得のためでなく、社会的な正当性を動機に行動する。

また、特定のレジティマシーが通用する範囲をフィールド(field)と呼ぶ。
新しく生まれた産業などの新しいフィールドでは、収益獲得のために各社が様々な行動を取る。

そして特定の「行動」「ビジネス慣習」「仕事の仕方」が多くの企業に採用されていく。やがて残りの企業は「他社がやっているから」といった、心理的・認知的な近さからだけの理由で多くの企業に採用された行動を自社でも採用するようになる。

結果、そのフィールドで常識が生まれ、フィールド内の企業が同質化されていくのだ。

この同質化プロセスをアイソモーフィズム(isomorphism)と呼ぶ。

経営理論の大部分は「なぜ企業XとYは違うのか」といった企業の差異を説明するものがほとんどで、RBVの中心命題も他社と異なる(=希少で模倣困難な)経営資源が重要という主張だった。

しかしよりマクロな視点で見ればフィールド内の企業は驚くほど似ている。
例えば日本のビジネス界というフィールドでは「社員を重要なステークホルダーと認識」「新卒は4月に一括採用」「仰々しい名刺交換」などが行われ、「なぜそうあるべきなのか」の合理的な理由を考えなくなる。

その結果、社会的な正当性を求めて、人・組織は常識に染まり、同質化していく。

フィールド内の同質化は、業界という単位でも発生する。
例えば金融業界ではスーツで身を固めることが常識だし、スタートアップでは逆にスーツを着ないことが正当化されている。

このような常識を総称して、「制度の理論」(institutional logic)と呼ぶ。

アイソモーフィズムを促す、3種類のプレッシャー

同質化プロセスは以下の3つに分類され、その3種類のプレッシャーこそが社会学ベースの制度理論の基本メカニズムである。

  • 強制的圧力(coercive pressure)
  • 模倣的圧力(mimetic pressure)
  • 規範的圧力(normative pressure)

強制的圧力(coercive pressure)

政策・法制度などがもたらす圧力。その制約の及ぶ範囲の企業は、似た行動を取りがちになる。
例えば先に例を挙げたダイバーシティもこの圧力によるものと言えそうだ。

女性活躍推進法案の結果、「そもそも女性管理職比率を30%に上げることが、全ての企業に有益かどうか」は深く議論されないまま、「政府が推奨しているから」という理由で、多くの企業がこぞって女性登用を増やそうとしている部分もあるのかもしれない。

模倣的圧力(mimetic pressure)

「皆がやっているから」というのが、模倣的圧力である。環境の不確実性が高い時にこの圧力は強くなる。

「まずは周囲の多くがやっていることを、自分も採用しよう」という心理メカニズが働くからだ。

規範的圧力(normative pressure)

規範的圧力は、特定の職業分野・専門分野(professionalism)で生じる。「この職業はこうでなくてはならない」という圧力のことだ。

先に述べたような「銀行員らしい服装」「スタートアップらしい服装」もその例である。

自フィールドの常識は、他フィールドの非常識である

制度理論は「常識が形成されるメカニズム」を説明する経営学で数少ない理論の1つである。
例えば次の4つのような同質化事象が研究されている。

  • 人事施策
  • オペレーション施策
  • 組織制度
  • 企業の社会的責任(CSR)

人事施策

バブル崩壊後の日本では、人員整理に取り組むことが大きな常識となった。
アメリカの日本経済研究者も「大きくて知名度が高い企業ほど最初は及び腰だったが、周りの企業が取り組むと大企業も人員整理に取り組むようになった」傾向を明らかにしている。

人員整理が社会的レジティマシーになっていない段階では、大企業ほどそれを行わない。しかし人員整理が常識になると大手企業はその段階でようやく着手し始めたのだ。

オペレーション手法

TQMなどのオペレーション手法は経営トップが無理に導入しても、その複雑さなどから現場で受け入れられにくい。

ただこちらも研究で「経営トップがTQMを導入してもなかなか現場に受け入れられないが、一部の成功例を取り上げて仕切りに周囲にアピールすると、TQMが正当化されて業界に普及していく」というプロセスが描き出されている。

組織制度

「同業他社で事業部制が普及するほど、自社も事業部制を取り入れる」傾向が明らかになっている。

企業の社会的責任(CSR)

経済合理性のみを考えるとCSRは業績にプラスになるとは限らない。
しかしCSRは日本の大企業で常識となりつつある。なかには「他社がやっているから」という理由で取り入れている企業もあるはずだ。

このように社会学ベースの制度理論によれば、フィールド上の3つのプレッシャーは社会フィールドで特定の行動を正当化し、企業は経済合理性ではなく、レジティマシー獲得のためにその行動を取り、同質化していく。

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