世界標準の経営理論(著:入山 章栄 早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)の理解を深めるために、内容のまとめをアウトプットしていきます。
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今日は意思決定の理論についてまとめます。
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目次
規範的な意思決定、意思決定のバイアス、直感
現代の意思決定論は以下の2つに分かれる。
1.規範的意思決定論(normative decision making):
合理性などを基準に、バイアスのない状態での「あるべき、合理的な意思決定」を導き出す分野。いわゆる「〜べき論」
2.行動的意思決定論(behavioral decision making):
なぜ人は合理的に意思決定できないのか、そのバイアスをあぶり出す分野
さらに近年の経営学では第3の意思決定論として「直感」も注目され始めている。
正確には直感も「2.行動的意思決定論」のひとつだが、「人は、合理的・論理的にじっくりと意思決定するよりも、時に直感で意思決定した方が望ましい結果を得られる」という研究成果が提示されつつある。
規範的意思決定論(normative decision making)
期待効用理論:規範的意思決定の基礎中の基礎の理論
最も基本的な考え方は「期待値」
期待値
我々は不確実性に取り囲まれているため、最適な答えを予見できず、複数の選択肢から意思決定をする必要がある。
期待効用理論で取り扱われる不確実性は「特定の事象が起きる確率」のこと。
以下の例をもとに意思決定に迫られている状況を考えてみる。
・事業A:
成功確率30%で利益が100億になる。失敗確率70%で損失が40億になる(=マイナス50億の利益)
・事業B:
成功確率40%で利益が40億になる。失敗確率60%で損失が20億になる(=マイナス20億の利益)
ここで重要になるのが期待値(expected value)
期待値
それぞれの事象が起きた時(この時、成功か失敗)に得られる損失に、その事象が起きる確率を掛け算し、それらを合計したもの
・事業Aの期待値:
EA = (100億 × 30%) + (-40億 × 70%) = 30億 – 28億 = 2億
・事業Bの期待値:
EB = (40億 × 40%) + (-20億 × 60%) = 36億 – 12億 = 24億
事業Bの方が期待値が高いので、合理的であれば事業Bに投資すべきということになる。
期待効用とリスク選好
期待値は合理的な意思決定をする上での基本中の基本である。ただ、意思決定には人の主観が介在する。
その主観の側面を数学的な意思決定ツールに取り込んだのが期待効用(expected utility)である。
期待効用
人が投資の得失にどのくらいメリットを感じるかを表したもの
一般に「人は所有する資産が大きくなればなるほど、投資などによって追加的に得られる利得(=資産の増加)に対する追加的な効用の上昇が小さくなる」傾向にある
資産が大きくなるほど追加的効用の上昇が小さくなるということは、不確実性・リスクを恐れるようになる。つまりリスク回避的(risk averse)となる。
リスク性向(risk preference)
投資リスクに対する態度
リスク志向的(risk seeking):資産が高いほどむしろリスクを好む人
リスク中立的(risk neutral):資産の大小にかかわらずリスク選好が変わらない人
リスク回避的(risk averse):資産が大きいほどリスクを回避する人
リスク選好の違いは、エージェンシー問題を引き起こす
人は性格・立場・状況により、リスク選好は変わりうる。
(典型例)投資家と経営者の立場の違い
株主などの投資家:
複数企業に分散投資しているので、リスクヘッジができている。リスク回避度が弱くなりがち
経営者:
「自身のキャリア」を賭けて投資しているのは、自身が経営する1社のみ。一度の大きなミスが自身のキャリア・資産に及ぼす影響は大きいので、リスク回避度は強くなる。
行動的意思決定論(behavioral decision making)
代表的な理論:プロスペクト理論。より現実的な人の意思決定の描写に成功した。
プロスペクト理論の主な命題は以下の3点
・命題1:人は投資成果に対して「主観的なリファレンス・ポイント」を持つ
・命題2:人は損失を避けたがる(=損失回避性(loss aversion))
・命題3:人は利得が増えるほどリスク回避的になり、損をするほどリスク志向性に近く

https://studyhacker.net/prospect-theory
企業が損切りをできない理由
エスカレーション・コミットメント:事業の失敗が明らかなのにもかかわらず、撤退ができず、失敗事業にさらに資金を注ぎ込んでしまう意思決定バイアスの傾向
この理論はプロスペクト理論の命題3で説明可能
人は失敗を重ねるほどリスク志向的になり、結果としてリスクの高い投資を行う傾向があるからだ。
例えば過去のパナソニックのプラズマ事業への過剰投資は、エスカレーション・コミットメントであると言える。
あと近年だと三菱重工のMRJプロジェクトも同じではないだろうか。
フレーミングだけで人の意思は変えられる
プロスペクト理論で大きな役割を果たすのはリファレンス・ポイントである。
ただこのリファレンス・ポイントは主観的なものであるため、これをどこに設定するかで、客観的な結果を利得にも損失にも解釈できる。
つまり、人の主観にうまく働きかけてリファレンス・ポイントを動かしてやれば、それは他人の意思決定に影響を与え得ることになる。これをフレーミング効果と呼ぶ。
利得の面を強調したフレーミングで選択肢を与えられるとリスク回避的な意思決定をしがちになり、
逆に損失を強調したフレーミングで選択肢を与えられた人はリスク志向的な意思決定をしがちになる。
例えば同じ「400万ポンドを目標とした事業投資」について、以下の2つのフレーミングがあるとする。
フレーミング1:この事業に投資をすれば、4分の1の確率で400万ポンドを手に入れられるが、4分の3の確率で利得はゼロになる
フレーミング2:この事業に投資をすれば、4分の1の確率で目標を達成できるが、4分の3の確率で目標から400万ポンド下回ることになる
フレーミング1のリファレンス・ポイント:ゼロ(利得を強調)
フレーミング2のリファレンス・ポイント:400万ポンド(損失を強調)
前者のフレーミングを提示された人はリスク回避的に意思決定をして、後者のフレーミングを提示された人はリスク志向的に意思決定をする傾向がある。
つまり、フレーミングの表現をうまく使い分けて他者の主観的なリファレンス・ポイントを変えれば、ターゲットのリスク志向性を高めることも、逆にリスク回避性を高めることも可能ということだ。
次回:直感について
残りの直感について次回の記事でまとめます。