世界標準の経営理論(著:入山 章栄 早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)の理解を深めるために、内容のまとめをアウトプットしていきます。
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今日は組織の知識創造理論(SECIモデル)についてまとめます。
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組織学習循環プロセスの復習
今日は以下の図のサブプロセス②にあたる内容です。

サブプロセス②「知の獲得」には3つの方法がある
・知の創造(knowledge creation,自ら知を生み出す)
・知の移転(knowledge transfer,ライセンシング契約などで他社から学ぶ など)
・代理経験(vicarious learning,他社を見ることで学習する)
今日まとめるSECIモデル(セキモデル)は一橋大学名誉教授・野中郁次郎がを描き切った世界で唯一の「知の創造プロセス」についての理論
SECIモデルはイノベーション、デザイン思考、AIとの付き合い方など、ビジネスの世界で大きな課題となっていることに多大な示唆を与える
知識と情報の違い
SECIモデル前まではほぼ全ての理論で「情報」「知識」の言葉を入れ替えても問題なかった。
しかし野中が「”知識”は”情報”とは違うのではないか」と違和感を感じたことがSECIモデルの出発点となった。その時出会ったのが「人格的知識としての暗黙知」である
人格的知識としての暗黙知
SECIモデルの根底にある考え
形式知も暗黙知も含めた複数人の「人格」がぶつかり、時に融合すること
形式知
言語化・記号化された知のこと
話し言葉や書き言葉、数式・図表、プログラミング言語など全て形式知
暗黙知
言語・文章・記号などでの表現が難しい、主観的・身体的な経験値のこと
暗黙知は「個人の身体に体化されたもの」「個人そのものに体化される認知スキル」の2つに分解することができる。
前者はスポーツ・アートなど日々何度も何度も繰り返し練習して身体にみにつくスキルのこと
後者は直感・閃き・勘など個人の過去の経験によって導き出される形式知化することが難しいことがら
知識と情報の違いは「形式知」「暗黙知」で区別できる。
知識=暗黙知:個人の経験などで体化されていることがら
情報=形式知:ごく一部の形式知化された部分が顕在化したこと

SECIモデル
SECIモデルの根幹:組織内における個人と個人、あるいはより多くの人たちの間での、暗黙知と形式知のダイナミックな相互作用
知の相互作用プロセスは「2×2」の4パターンで説明可能
「Socialization」「Externalization」「Internalization」「Combination」の頭文字をとってSECIモデルと呼ぶ

①共同化(Socialization):暗黙知→暗黙知
個人が他者との直接対面による共感や、環境との相互作用を通じて暗黙知を獲得する
SECIモデルの出発点としてある人(の集団)の暗黙知が、別の人(の集団)に共有されなければならない。新しい知を生み出すには複数者の暗黙知が共有される必要があり、その方法は2つある。
1)身体を使っての共同体験
身体を使って個人に体化された暗黙知を、移転・共有すること
長嶋監督と松井秀喜の素振り練習とかは典型的な「身体化された暗黙知」の共同化フェーズ
2)共感(Compassion),対話(Dialogue)
決定的に重要なのが共感
信条・信念・思考法・直感・思考の感覚などの「認知的な暗黙知」の共有には欠かせない。
ただ個人の思考の感覚などは十分に言語化できていないため、なかなか伝えることが難しい。形式知かされていないため、パワポや文書でプレゼンをしても伝わらない。
そのため「知的コンバット(一対一での徹底的な対話)」が必要となる。
②表出化(Externalization):暗黙知→形式知
個人間の暗黙知を対話・思索・メタファーなどを通して、概念や図像、仮説などを作り、集団の形式知に変換する
共同化を経て共有された暗黙知は、そのままでは使えない。
例えば「エモい」という言葉
若者間ではエモいの意味を共有できているので、言語化して使うことが可能だった。しかしその意味を理解できていない中高年は言語化されても使うことができていない。
従ってエモいの場合、若者間ではこのフェーズができているということである。
表出化フェーズ(暗黙知→形式知)で効果的なもの3つ
1)比喩(Metaphor)、類似推論(Analogy)
暗黙知は言語化されていないので、メタファーやアナロジーなどの重要性は大きい。
まずはそれ(暗黙知)に近しいもの(比喩・たとえ)で代替し、相手にイメージを共有してもらう。
比喩の例:日本電産 永守氏、自身の経営手法を「千切り経営」と説明
「何か問題があったら、包丁で千切りするように事象を細かく刻んで分析せよ」ということ
2)アブダクション(Abduction)
暗黙知から「仮説化」を行うこと。いわゆる「ハッとした気づき・閃き」に近いもの
「A→」が本当に正しいかは、問題ではない。「A→」の可能性に気が付くことが重要なのだ。
3)デザイン思考
暗黙知を図像化することがデザイン
デザイン思考分野で注目を集める左宗氏曰く「デザインとは、暗黙知を形式知化すること」
③連結化(Combination):形式知→形式知
集団レベルの形式知を組み合わせて、物語や理論に体系化する
表出して形式知化された知は、組織全体で集められ、組み合わせられ、連結されて、「組織の知」としてまとめられ、伝えられる必要がある。
現場の知ならマニュアル化も機能するが、会社の信条・方向性・戦略のような「認知的な暗黙知」を形式知化させた場合は伝わらない。
その際に必要になるのがナラティブである。
ナラティブ(物語る)
例えば「会社の方向性」といったまだ具現化していないが、これから起こることの構造
ナラティブは単なる名詞ではなく、「物語る」という動詞である。そのため物語でなければならない。
世界的な経営者の孫正義、永守重信、豊田章男、サティア・ナデラなどはナラティブに長けている
④内面化(Internalization):形式知→暗黙知
組織レベルの形式知を実践し、成果として新たな価値を生み出すとともに、新たな暗黙知として個人・集団・組織レベルのノウハウとして「体得」する
具体的な行動、アクションのこと。連結化されて紡がれた形式知も、それをもとに行動されなければ意味がない。
共感と知的コンバット
共感はSECIモデルに必要不可欠なプロセスであり、「他者との共感」が重要な現象学と親和性が高い
全人格をかけた知の格闘(知的コンバット)を行うことで、互いの主体と客体が一体化していく。その結果、共感が発生し、共同化が進んでいく。
そのため野中教授は徹底的な議論が発生しにくいブレストに懐疑的である。必要なのはあくまでも「共感・共同化に到るまでの徹底的な知的コンバット」なのである。
知的コンバットをするには、快適な椅子に座って皆でポストイットを貼りながら多人数で行うブレストは「快適すぎる」
これからが野中理論の時代
SECIモデルで描かれることは、ほぼ全て人工知能ができないことだ。「なぜ生身の人間こそが、知の創造に必要なのか」を説明している。