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【経営理論】ビジネスと経営理論【理解と実践】

世界標準の経営理論(著:入山 章栄 早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)の理解を深めるために、内容のまとめをアウトプットしていきます。

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今日はビジネスと経営理論です。

経営理論はビジネスを説明できない

著者入山章栄氏は「現代の経営理論はビジネスを説明できない」と理解している。
今回は以下の3つの側面に絞り、経営学の知見を解説しながらビジネスと経営理論の交差点を解き明かす。
・ビジネスプランニング
・ビジネスモデル
・ビジネス

ビジネスプランニングと経営理論

ビジネスプランニングの理解に必要なのが、コンテンツとプランニングの違いである。
コンテンツ=中身
プランニング=戦略コンテンツを策定・計画するプロセスそのもの
「どのようにして戦略は策定されるべきか」という問いに答えようとする分野を戦略領域では戦略プランニング(strategic planning)と呼び、新規事業策定やスタートアップ企業の事業策定に適用する領域をビジネスプランニング(business planning)と呼ぶ。

アメリカのアントレプレナーシップ大家である研究者はビジネスプランニングを以下の通り定義している

ビジネスプランニングとは、(新しい事業のために)情報を集めて分析し、必要なタスクを評価し、リスクと戦略を見つけ、ファイナンスの道筋をつけ、そしてそれらを書面に書き示すことである

プランニングは1970年代までの戦略領域の主要研究テーマであったが、当時の戦略論とは「プランニング」のことであったとも言える。

1980年代に入ってSCP,RBVなどコンテンツ側の革新的な理論が次々に示されたことで、戦略領域は大転換点を迎え、1990年代以降の経営学者の大部分はコンテンツ研究を行うようになった。

結果、ここ30年ほどプランニング分野は大きな研究の進展がなかった。事実プランニング分野の主要研究テーマは数十年変わっていない。
それは「戦略・ビジネスプランは厳密に計画すべきものか、それともまずは計画をほとんど立てずに行動すべきか」という論争だ。前者を計画派、後者を行動派と呼ぶことにする。

計画派の基本主張は「PDCAサイクルを厳密にしっかり回すべき」というものであり、一方の行動派の基本主張は「事前の厳密な計画は意味がない」というものだ。
行動派は「まずはどんどん行動を起こすことで周囲の事業環境を学び、結果として徐々に『どのような戦略が望ましいか』湧き上がってくる」と考えるのである。

この計画派と行動派を説明できる経営理論を探しても、プランニング分野を説明できる経営理論はほとんどない。なぜなら過去に紹介した理論の大部分はコンテンツを説明するものだからである。

特に理論との接点をほとんど見出せないのが計画派だ。計画とはPDCAを回すプロセスのことだが、過去に紹介した理論の大部分はこのようなプロセスを説明しない。強いて言えばリアル・オプション理論が該当するくらいである。

一方、行動派の主張と親和性が高い理論はセンスメイキング理論だ。とはいえ、センスメイキングを超えて行動派を説明する理論がないのも事実だ。

このように現代の経営理論はビジネスプランニングを十分に説明できない。なぜビジネスプランニングは下火なのか。その背景の一つは「『そもそもビジネスプランニングが目指すべき成果』が経営理論では説明しにくいから」だと著者は考える。

ビジネスモデルと経営理論

まず現代経営学における大前提から述べると「世界の経営学において、ビジネスモデルの研究はほとんど確立されていない」。

しかし現実社会の要請を受けて経営学者もビジネスモデル研究への関心は明らかに高まっている。それにもかかわらず高いレベルの研究が出てきていない。

その理由は2つある。
1.ビジネスモデルの学術的な定義が曖昧
2.様々な要素・関係性を「統合的につなぎ合わせたもの」

すなわちビジネスモデルというのは、「全体像・デザイン」を示すものということだ。

経営理論は全体像を描けない

一例として過去に発表された論文を取り上げる。
論文作成時に当時世界的に注目されていたeビジネス企業59社に対して徹底的なケーススタディを行った結果、eビジネスにおける価値創造のためのビジネスモデル・デザインの条件として以下の4つを帰納的に導出した。

  • 条件①効率性(efficiency):取引費用理論、情報の経営学が該当

条件よりも取引上のコストを抑えられるビジネスモデルのこと。この点は、過去に紹介した取引費用理論や情報の経済学が当てはまる。

  • 条件②補完性(complementarity):RBVが該当

複数の取引主体を結びつけることで、単体では得られなかった効果を得る。いわゆるシナジー効果のこと。これはRBVそのものである。

  • 条件③囲い込み(lock-in):SCP理論が該当

顧客を同業競合他社の製品・サービスに流出しにくくすること。参加するプレーヤーが多くなるほどユーザーの効用が高まり、結果的に雪だるま式に顧客も出品者も増え、ユーザーがロックインされるのだ。これはSCPのエッセンスそのものである。

  • 条件④新奇性(novelty):ソーシャルネットワークの諸理論などが該当

取引主体との関係性や構造に変革を起こすビジネスモデルのデザインのこと。この点はソーシャルネットワークの理論が当てはまる。

このようにeビジネス一つとっても、成功するビジネスモデルには様々な条件がある。その条件の一つひとつは、経営理論で十分に説明がつく。問題はビジネスモデルはそれらを組み合わせた「全体」であることだ。

実際にはこれらの理論を組み合わせることは難しい。第1にそれぞれが経営学ディシプリンや社会学ディシプリンなど違う前提に立っている理論だからであり、第2に理論が重なり合って関係性が複雑になることは「簡潔に本質のメカニズムだけを切り取る」という、経営理論の目的にそぐわないからだ。

全体主義と還元主義

科学哲学には全体主義と要素還元主義という考え方がある。
要素還元主義(reductionism)とは「複雑な事象でも、その要素を細かく分解してそれぞれの本質的な法則・メカニズムと導き出せば、それらを足し合わせて全体構造の本質が導き出せるはずだ」という考え方である。

まさに要素還元主義とはビジネスモデルに対する考え方と同じだ。ただ難しいのは「部分を足し合わせたものが、全体を説明できるとは限らない」ことだ。

一方の全体主義(wholism)はその逆で、「全体をそのまま捉えよう」とするアプローチだ。全体主義視点の代表格は複雑系(complexity)である。
実際この世の中の様々な動き・形状の全体像が複雑系で捉えられることはよく知られている。

一方で難しいのは、複雑系はその全体パターンを分析・予見することはできても、子細のメカニズムを知り得ないことだ。全体のパターンを分析する複雑系は、whyに答えない(答えようとしない)のである。

ビジネスモデルも同様だ。細かなメカニズムは本書で紹介した理論の数々で多くが説明できる。しかしそれらを足し合わせた「ビジネスモデルの全体像」を説明する理論は、現時点でこの世に存在しないのだ。

細かい理論の知見を積み重ねるからこそ、やがて「全体」を描けるはずだ。全体を描く道標として、思考の軸となる経営理論は間違いなく有用だ。課題は全体をまとめ上げるための理論視座を、現代の(還元主義である)経営学は十分に持っていないことにある。

そもそもビジネスの目的とは何なのだろうか。実は、現代社会ではこれがはっきりしないのだ。

ビジネスを証明できる理論がない

現代社会においてビジネスの目的は何だろうか。この根源的な問いに、我々は世界共通のコンセンサスを持っていない。

ポイントは現代のビジネスでは必ずしも我々が経済的な収益を上げるだけが目的ではないということだ。

過去に紹介してきた理論はあくまで企業・組織・人や、人と人の関係のメカニズムを解き明かす理論であって、ビジネスそのものの理論ではない。

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